
大風呂敷じゃない!布一枚が広げた、サステナ外交から100%リサイクルの染色技術まで
レジ袋の有料化以降、色や形もさまざまなエコバッグを見かけるようになりました。私自身も、ほぼ毎日のように使っています。ただ、まだ使えるものがあるにも関わらず、つい新しいエコバッグを手に取ってしまうこともあり、そんなとき、ふと思うのです。いくつも買い足していて、それは本当にエコなのだろうか、と。繰り返し使うこと、長く大切に使うこと、その原点のような存在として思い出したのが、昔ながらの風呂敷でした。
先さまへの想いを包み、はんなりと贈る。風呂敷は、日本人の生活の中で長く愛されてきた暮らしの布です。包む、運ぶ、贈る、しまう、まとめる、守る…。一枚あるだけでさまざまな用途に使える風呂敷は、江戸時代に広く普及し、実用性に加えて装飾性も大切にされるようになりました。時を経て令和のいま、サステナブルな社会を考えるうえでも、再び注目を集めています。
今回、お話を伺ったのは、風呂敷を通じたサステナブルな活動を行っている、風呂敷専門店・唐草屋の小山さん。その取り組みや想いについて語っていただきました。
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包み方教室での反響が、サステナブルへの気づきの原点
まず、唐草屋さんについてと、サステナブルな活動を始めたきっかけを教えてください
東京・人形町にある唐草屋は、明治30年(1897年)創業の京都の老舗風呂敷卸売メーカーが手がける、風呂敷専門店です。京都の本店では、百貨店や専門店への卸売に加え、世界各地の暮らしの布を集めたり、風呂敷や袱紗(ふくさ)に関する書籍を発刊したりと、早くから風呂敷文化の啓蒙に取り組んできました。
その流れのなかで、平成の初め頃、百貨店での催事で包み方教室を行ったのが大きな転機でした。当時は、店頭で包み方を実演しながら販売するのは初めての試みでしたが、お客さまから予想以上の反響をいただきました。
その経験を通じて「包み方を伝えること」自体が、とても大切な役割を持っているのではないかと気づいたのです。この気づきが、これからも会社として続けていくべき活動だと考えるきっかけとなり、私たちのサステナブルな取り組みの原点になっています。

包み方教室の様子、一番右が唐草屋・小山さん
変幻自在の包みを、いまにバージョンアップ
包み方教室をきっかけに、さまざまな包み方を開発されていったそうですね
昔からある「平包み」や「お使い包み」に加え、現代の暮らしにマッチした包み方を開発していきました。「シンプルバッグ包み」や「ティッシュ箱包み」。「瓶包み」の口のところを花びらのように発展させた「ワイン包み」などです。こうした装飾性を取り入れた包み方は、それまであまりなかった発想だったと思います。一枚の布で、実用性と見た目の楽しさの両方を表現できるのは、風呂敷ならではの魅力ですね。紙の包装紙だと使い切りですが、風呂敷は何度でも形を変えて使える。その点も、大きな価値だと考えています。
(風呂敷の包み方:https://www.miyai-net.co.jp/furoshiki/wrap/)
海を越え、言葉を超えた、サステナ外交
海外での風呂敷啓蒙活動にも、積極的に取り組まれていますね
2018年は東京都とパリ市による文化交流事業の一環として、パリ市庁舎前広場に設けられたパビリオンで、風呂敷の展示や包み方教室を行いました。日本発のエコロジー文化やモノを大切に使い続ける心をまとった風呂敷の魅力を、海外の方々に伝えることが目的です。いわばサステナ外交といった感じでしょうか。
言葉の問題ですか?通訳のサポートもありましたし、何より包み方は見て学べるため、大きな問題はありませんでした。実際に体験していただくと、外国のお客さまもすぐに理解してくださいます。風呂敷に似た用途の布というのは、実は世界各地に存在します。そのため、完成形だけを見ると難しそうに感じられても、やってみると意外に簡単にできるんです。
フランスで包み方を教える小山さん
ゴミ排出量ゼロ、100%リサイクルの染色技術の誕生
製法や素材の面で、環境に配慮した取り組みはありますか?
かつては、染色後に余分なノリなどを洗い流すために「友禅川流し」が行われていました。しかし、水質汚染の問題から、現在では人工流水を使い、工場で処理する方法へと変わっています。
さらに近年、転写捺染(てんしゃなっせん)という、非常に環境負荷の少ない染色技術が注目を集めています。これは、簡単に説明しますと、紙に染料を吹き付け、その紙を風呂敷に重ねて、熱と圧力だけで色を転写する方法です。水を一切使わずに染色できるのが大きな特長です。また、使用済みの転写紙は細かく裁断され、固形燃料として再利用されます。そのため、この転写技術は100%リサイクル※を実現した染色技術といえます。また、素材の面でも環境への配慮は進んでおり、再生ポリエステル100%の風呂敷も登場しています。サラサラとした素材感がシワになりにくく扱いやすいため 、多くの方に好評です。
※100%リサイクル:水を一切使用しない「転写捺染技法」において、染色後に発生する、転写紙、ロールの芯、梱包材などをすべてリサイクル事業者に回収依頼し、再生紙や固形燃料として生まれ変わらせることで、100%リサイクルとしています。

年齢や性別、国籍を問わず、誰をも包み込む風呂敷
小学生やインバウンドのお客さまにも、包み方教室を行っているそうですね
地域の小学校から総合学習の一環としてご依頼いただき、授業を行うこともあります。風呂敷は昔から使われてきたものですが、いまの暮らしの中でもとても便利です。たとえば、昔ながらの「すいか包み」も、サッカーボールを包めば、持ち運びがしやすくなります。古くからある知恵が、現代の生活でも役立つことを子どもたちに伝えたいと考えています。生徒さんたちも、うまく包めたときはパッと顔が輝くのがわかりますよ。自然と達成感が表情に表れますね。教えている私たちにとってもうれしい瞬間です。
ツアーで来られたインバウンドのお客さまには、店舗で包み方をレクチャーすることもあります。ちなみに外国のお客さまには、日本らしさが感じられる古典柄が人気ですね。日本の多彩な包み方だけではなく、ものを大切に使い続ける日本の心も、お土産として一緒に持ち帰っていただけたらと思っています。なお、有償にはなりますが、企業さま向けの包み方教室も行っておりますので、ご興味がありましたら、お気軽にご相談ください。

小学生からの感謝のお手紙
おわりに
サステナブルというと、とかく新しい技術や革新的なアイデアに目が向きがちです。ですが、風呂敷が教えてくれるのは「すでにあるものを工夫しながら、長く使い続ける」という、ごく本質的なサステナブルのカタチではないでしょうか。昔から身の回りにあるものに、もう一度目を向けてみることも、これからの時代に必要な視点だと、今回の取材を通じて感じました。
そしてまた、布一枚からはじまる小さな取り組みは、やがて地球の未来にも繋がっていくこと、それは、決して大風呂敷ではないことも、風呂敷から学びました。
企業のサステナブルな取り組みにおいても、これらの学びは活かせると思います。新しい施策を次々と打ち出すだけでなく、自社の強みやこれまで積み重ねてきた価値を見つめ直し、活用し、伝えていく。それもまた、持続可能な企業活動のひとつです。
アイプラネットでは風呂敷のように、まずは身近なことからはじめられるサステナブルな取り組みのご支援も行っています。毎日の暮らしのなかで、そして企業活動のなかで、無理なく続けられるサステナブルを、この機会に一緒に見つけてみませんか。どうぞお気軽にお問い合わせください。




