『とはいえ現実には難しい』が社内から出なくなる、サステナ意識浸透の実例 ~決め手はコミュニケーションにあり~
アイプラネット サステナビリティLabの共創パートナー、横山泰治です。前回のシリーズコラムでは、「サステナビリティの実効を伝え、ウォッシュと言われないためには?」として、企業と社会との関係性についてお話ししました。私がお伝えするシリーズコラム全3回の締めとなる今回は、今後社内で推進される際の参考になる意識浸透の実例をご紹介します。
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「とはいえ現実には難しい」の正体
サステナビリティの重要性は日に日に増しています。SDGsという共通言語も世界に広まって認知度も上がり、環境や経済、社会での危険性も現れて共通意識も高まっています。
それでも、サステナビリティの推進を任された、総務や業務、広報、人事、経営戦略室の担当者の皆様が直面するのが「とはいえ現実には難しい」という現場からの声。もしかすると無意識にご自身でも考えているかもしれません。
「とはいえ現実には難しい」の正体は何でしょうか?
何から手をつけていけばよいのか、周りの協力が得られるのか、社内外からの評価はどう変わるのか…など、理由だけであれば次々と思い当たりますね。
いずれも「とはいえ現実には難しい」の正体が「不安」であることが多く、そしてこの「不安」はあってよいもの、とまずは捉えましょう。「不安なまま」でよいのです。前回までのコラムでもお伝えした通り、企業のサステナビリティの具体化は“待ったなし”であるにもかかわらず、データの定義が部分的に不明確だったり、明確であっても業界内や社内で未だ徹底されにくい課題に取り組んでいくのですから。
今回のコラムでは、サステナビリティの推進に必要な「社内外での共創」について、意識の浸透に成功した事例を、ポイントを押さえてご紹介します。
「不安」を許容し、「不満」から「不信」への悪循環を止める
私が顧問として関わっている国内のある企業では、人事・経営戦略室の担当者がサステナビリティ推進も兼務しています。
中長期的な企業価値の向上に欠かせないサステナビリティの推進ですが、短期的な業績向上には直結しにくく、社員もその意義を実感しにくいのが現実。担当者としてはもちろん不安もあります。
この「不安」はあっていい。ただ、この不安は何も行動しないと「不満」に変わります。周囲からの「不満」は具体的な手を打たないと解消されることがありません。社内であれば、目にみえる待遇の向上や、社員が価値を感じられる情報発信などの行動です。そしてこの「不満」が解消されないと、さらに「不信」へと悪化してしまいます。
「不信」まで達すると、根本である信頼関係に影響し、サステナビリティどころか、離職率の増加や、ガバナンスの低下につながり、さらなる「不安」を生むことになります。
この悪循環を止めるために必要なのが、不安を共有しながらも、サステナビリティの重要性と緊急性を体験できる「共創プログラム」の実施です。例に挙げた企業では、サステナビリティLabでもご紹介しているシンプルな「SDGsカードワーク」を実施することで、個人の身近な業務によるSDGsへの影響と内容を、サステナビリティの観点から社内共有できました。
それぞれの仕事が、必ずサステナビリティにつながっています。ただ、孤立や孤独が「不安」の火種になります。「不安」も含めて共有しながらご自身の業務起点でコミュニケーションを起こすことで、不安が解消されたその企業では離職率も減り、ガバナンスも向上しています。
アイプラネットにおいても社内研修の一環として、各営業部を横断して同カードワークを実施し、「SDGsを仕事と結びつけて自分ゴト化できた」などのコメントを含め、アンケートで満足度94%*を獲得しています。
*今回のワークショップはいかがでしたか?の問いに対し「大変良かった」「良かった」の回答者合計。
「共通意識」と「共通言語」の間を埋める「共通体験」が推進力に
サステナビリティの重要性と緊急性の高まりは共通意識としてある、SDGsという共通言語の認知度も上がってきた。しかしそれでも「推進力が生じない」という課題を抱える企業は数多くあります。
この推進力を生み出す「共通体験」として、自社のパーパス(存在意義)の策定と、適切な行動をシミュレーションするワークショップが有効です。日常業務は個別だとしても孤立せず、企業全体のゴールへつながっている、という横断的な「共通体験」を経ることで、「わかってはいるけど」の共通意識への障害と、「だれかが決めた」という共通言語に対する抵抗に、適切に対応することができるようになります。
例えば、ある企業では自社のパーパスをサステナビリティ担当者の発案でトップを巻き込んで策定しました。自社の設立背景から目指すビジョン、ビジョン達成のための具体的な現在の状況とアクション、アクションすることでの社内外への影響が、社員一人ひとりのウェルビーイングにどのようにつながるかまでを全社で検討する、理想的な共通体験です。共通意識と共通言語をこの共通体験でつなぐことで社員の主体性が生まれ、サステナビリティの推進力となりました。
また、社員と企業所在地域での関係者(行政・関係市民)と事業者のSDGsワークショップを積極的に行うことで、社員が働く地域社会との関係性が強くなり、より身近にサステナビリティ推進の重要性を感じられています。
まとめ:決め手はコミュニケーションにあり
経団連による報告書「『SDGsへの取組みの測定・評価に関する現状と課題』 ―『行動の10年』を迎えて―」が発行された2021年以降、企業は経営戦略や経営計画、事業計画等で重要課題、重要業績評価指標を設定し、グローバル指標なども参考にしながら、統合報告書、サステナビリティ報告書、ホームページなどでの公表が求められてきています。
また、企業・事業レベルのSDGsの取り組み効果を測定・評価する手法などについても、様々なものが開発されつつあります。測定・評価の対象も企業全体と事業単位に分かれるなど、企業価値と社会価値両方の視点を持つことの必要性は増すばかりです。
ただ、言わずもがな企業の根本は人です。「企業とは人であり、その知識、能力、絆である。」とドラッカーが言葉にした通り、この不透明な時代で生きる皆さんが、不安は自然なものとして感じつつ、孤独や孤立を感じずに働き、結果を出すことができること。
これこそがSDGsでの「だれ一人取り残さない」をより深めた、「だれ一人欠かすことのできない」を企業で実現し、サステナビリティな社会を実現する答えかもしれません。
アイプラネット サステナビリティLabでは、「サステナブルな社会をコミュニケーションのチカラで共に創っていく。」をテーマに、今回のポイントに挙げた「社員全体やご担当へのサステナビリティや共創の意識醸成」支援から、「会社のあり方」の基となるパーパスの策定、プロダクトやサービスへの実装から展開まで、我々のような各分野の共創パートナーと共に、さまざまな企業活動の伴走支援を行なっております。ぜひお気軽にご相談ください。
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