人類は今、借金まみれ?!地球の破綻日「アースオーバーシュートデー」とは?

 国際環境シンクタンクである「グローバル・フットプリント・ネットワーク(Global Footprint Network)」が毎年発表している「アースオーバーシュートデー(Earth Overshoot Day)」は、地球環境の持続可能性を評価するための重要な指標のひとつとされています。
 本コラムでは、「アースオーバーシュートデー」とは何か?その推移や見通し、そして現在の状況を踏まえて、今企業が実行すべき取り組みについてご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.「アースオーバーシュートデー」とは?
  2. 2.「アースオーバーシュートデー」の推移
  3. 3.世界各国毎の「アースオーバーシュートデー」
  4. 4.​​​​​​​企業が実行すべき取り組み
  5. 5.最後に

「アースオーバーシュートデー」とは?

 「アースオーバーシュートデー」は、地球が一年間に再生可能な生物資源を人類が使い果たしてしまう日を示すもので、毎年「地球の生物資源の使い過ぎ」を周知するために発表されています。この日は「バイオキャパシティ※1÷エコロジカル・フットプリント※2×365日」で計算されます。

この日以降、人類は地球の再生能力を超えて資源を消費し、環境に負荷をかけ続けることになります。1971年においては生物資源を使い切る日が12月25日だった「アースオーバーシュートデー」が年々早まり、2024年では8月1日となりました。つまり2024年8月2日以降は、未来の地球の再生可能な資源から“借金”していることになるのです。
※1 年間で地球の生態系から供給される生物資源。
※2 「生態系を踏みつけている足跡」の意味で、世界や国などの経済活動を保つために必要な土地面積で表現される。土地面積は耕作地・牧草地・森林地・漁場・生産阻害地・カーボン・フットプリントの6区分からなり、グローバル・ヘクタールという独自の世界共通の面積単位を用いて、人口×温室効果ガスの排出や森林・耕作地などの資源利用・過度な漁獲など人間一人あたりの消費×生産・廃棄効率で計算される。


「アースオーバーシュートデー」の推移

 過去50年間で「アースオーバーシュートデー」は着実に早まってきました。1970年代初頭には12月末だった日付が、1980年代には10月、2000年代には9月、そして近年では8月初旬にまで早まっています。この推移は、人類全体の資源消費が持続可能なレベルを大幅に超えてしまっていることを示しています。
 人類がこのままのペースで資源を消費し続けると、地球の生態系に深刻な影響を及ぼし、持続可能な未来を実現することが非常に困難な状態となってしまうのです。

©Global Footprint Network www.footprintnetwork.org


世界各国毎の「アースオーバーシュートデー」

 なお「グローバル・フットプリント・ネットワーク」では、世界各国毎の「アースオーバーシュートデー」も算出しています。これは、世界中の人々がその国と同じ生活スタイル、消費スタイルをした場合に地球に訪れる「アースオーバーシュートデー」がいつになるのかを示したものです。
 日本の2024年の「アースオーバーシュートデー」は何と5月16日。元旦からわずか137日後にはその年の自然資源を使い切ってしまうのです。日本は、一年間で地球約2.7個分もの暮らしをしており、世界に比べて大幅なオーバーシュート状態なのです。

©Global Footprint Network www.footprintnetwork.org

 ​​​​​​​「アースオーバーシュートデー」を遅らせるためには、世界的な取り組みが必要となります。グローバル・フットプリント・ネットワークは、「アースオーバーシュートデー」を毎年6日ずつ遅らせることで、2050年までに持続可能な資源消費の状態に戻ることができるとしています。しかし、これを実現するためには、企業や個人が積極的に環境負荷を軽減する取り組みを早急に実行する必要があります。


​​​​​​​企業が実行すべき取り組み

 では、企業がこの「アースオーバーシュートデー」を遅らせるために実行すべき具体的な取り組みには、どのようなものがあるのでしょう。その代表的な例について、いくつかご紹介します。

1、再生可能エネルギーの導入
 太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスの導入など、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーを積極的に導入することで、二酸化炭素排出量を大幅に削減。

2、サプライチェーン全体での見直し
 オーガニックコットンやリサイクルポリエステルなどのエコフレンドリーな素材の使用や環境負荷の少ない輸送手段への見直しなど、サプライチェーン全体での環境負荷軽減に向けた取り組みも効果的。

3、廃棄物の削減とリサイクルの推進
 製品パッケージの簡素化や、リサイクル素材の使用を推進することで廃棄物の削減につながり、環境負荷を軽減。

4、持続可能な製品開発
 エネルギー効率の高い家電製品や再生可能素材を使用した商品の開発など、消費者に対して環境配慮への選択肢の提供や意識づけも有効。

5、従業員への教育・啓発
 従業員に対して環境問題の緊急性と、地球環境と自社の持続可能性に関する社内研修やワークショップなどを行い、従業員ひとりひとりのサステナビリティに関する意識を高める。

6、透明性のあるステークホルダーへの報告
 サステナビリティレポートの定期発行など、地球環境配慮への取り組みや進捗状況について透明性を持った報告を行い、ステークホルダーとの信頼関係を構築する。


最後に

 地球環境の持続可能性を評価・把握するための重要な指標である「アースオーバーシュートデー」。現在の危機的な状況を理解した上で、改善に向けた様々な企業活動に取り組むことで地球の生物資源を使い切ってしまう日を遅らせ、未来に向けた持続可能な地球環境と社会を構築していくことが、現代を生きる我々一人ひとりの重要な役割と言えるのではないでしょうか。


古賀大資 サステナビリティLabメンバー
古賀大資 サステナビリティLabメンバー
株式会社アイプラネット アカウントプロデュース局アカウントプロデュース第1部

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