銀座のミカン狩りで学ぶ!サステナブルな社会を創る遠隔操作ロボット
近年、世界全体で環境問題や労働力不足が深刻化しています。例えば、頻発する地震や洪水などの自然災害の復旧作業においては、危険地域への人的派遣に伴うリスクが避けられません。また、過疎地域や少子高齢化による労働人口の減少により、インフラの維持や住民サービスの提供が不足する可能性も懸念されています。これらの課題は、サステナブルな社会を形成する上で大きな障害となっていますが、その解決策として注目されている「遠隔操作ロボット」についてご紹介します。
目次[非表示]
- 1.遠隔操作ロボットとは?
- 2.具体的に、どんなことに役に立つの?
- 2.1.災害派遣
- 2.2.労働力不足の解消
- 2.3.医療サービスの格差是正
- 2.4.インクルーシブな教育環境の整備
- 2.5.産業分野における生産効率化
- 3.ちょっと難しいので、実際に体験しに行きました。
遠隔操作ロボットとは?
遠隔操作ロボットとは、端末などを使って人が遠隔で作業を指示するタイプのロボットを指します。作業現場に人がいなくても、離れた場所から操作(=遠隔操作)できるため、さまざまな業界で活用されています。特に、危険が伴う環境やアクセスが難しい場所での作業において、安全性と効率性を大幅に向上させるツールとして注目されています。
具体的に、どんなことに役に立つの?
遠隔操作ロボットは、前述した災害派遣や労働力不足への対応はもちろんのこと、他にもさまざまな場面で活用され社会に貢献しています。ここでは、いくつかの代表的な事例をご紹介します。
災害派遣
● 安全な作業環境の提供
危険な環境での作業を人に代わって行うことで、災害現場での救助活動や復旧作業を安全に行なうことができます。
● 迅速な対応
災害発生時、迅速に現場へ派遣でき、被害状況を把握して初期対応をすることにより、被害の拡大を防ぐことができます。
例えば、福島第一原発廃炉に向けて、東京電力は遠隔操作ロボットを活用しています。人に代わってロボットが作業することにより、被ばくなどの作業リスクの低減に寄与しています。
参考:https://www.tepco.co.jp/decommision/principles/technology/robot/index-j.html
労働力不足の解消
● 効率的な作業
簡易的な作業は自動、複雑な作業は手動に切り替えるなど、状況に応じて連続稼働させることができるため、労働力不足の解消に貢献します。特に、高齢化が進む社会では、労働力の補完になり得ます。
● 専門技術の提供
遠隔地から専門技術を提供することができるため、専門分野における地域の労働力不足も補うことができます。
農業の現場では「ロボット農機」の活用により、人が遠隔操作し農作業をするスマート農業が進められており、労働力不足の改善に役立っています。
参考:https://www.maff.go.jp/j/keiei/nougyou_jinzaiikusei_kakuho/attach/pdf/smart_kyoiku-40.pdf
医療サービスの格差是正
● 遠隔手術
専門医が遠隔地から手術を行うことができます。これにより、医療アクセスが限られている地域でも高度な医療を提供することが可能になります。
● リハビリテーション
遠隔操作ロボットを用いたリハビリテーションは、患者が自宅でリハビリを受けることを可能にし、医療施設の負担軽減に繋がります。
医療の現場では遠隔操作ロボットを活用することにより、地方でも質の高い手術の機会創出や、患者の通院負担軽減に役立つことが期待されており、総務省も研究開発を進めています。
参考:https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/iryou_kaigo_kenkou_page1.html
インクルーシブな教育環境の整備
●遠隔教育
教師が遠隔地から授業を行うことができます。これにより、教育機会が限られている地域でも質の高い教育を提供することが可能になります。
● 実験・実習
遠隔操作ロボットを用いた実験や実習は、学生が自宅からでも実験を行うことができ、教育の幅を広げます。
例えば、病気やけがなどで長期間登校できない児童や生徒が、遠隔操作ロボットを活用して学校生活を送る実証実験も進められています。
参考:https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/889824?display=1
産業分野における生産効率化
●危険作業の代替
危険な環境での作業を人に代わって行うことにより、労働者の安全を確保しつつ、生産性を向上させることができます。
● メンテナンス
工場やインフラのメンテナンスを遠隔地から行うことができます。これにより、効率的なメンテナンスが可能になります。
ロボットを活用し、工場設備の遠隔点検をする検証を、複数企業が共同で行っている事例もあります。現場作業員の負荷軽減に役立つことが期待されています。
参考:https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2024/122000/
ちょっと難しいので、実際に体験しに行きました。
さまざまな分野で役立ち、サステナブルな社会の形成に寄与する「遠隔操作ロボット」ですが、日常生活の中で触れる機会は少なく、なにより専門的で難しい近寄りがたい感じがしますよね。そんな中、「銀座でミカン狩り体験をし、遠隔操作ロボットについて学べる」という、ユニークなイベントの企画を当社が行なったという情報を耳にしましたので、この度筆者が、いち来場者として体験に参加し、その模様をレポートいたします。
場所は、東京・銀座にある「METoA Ginza(メトアギンザ)」。ここは当社クライアントである三菱電機株式会社のイベントスクエアであり、社会課題の解決に向けた最新技術やイノベーションを体験できる施設です。2016年のオープン以来、すべてのイベントの企画・運営に当社が携わっています。
施設内は1Fから3Fまであり、時期ごとにさまざまなテーマの展示が行われています。1Fにはカフェも併設され、気軽に立ち寄れる雰囲気です。
そのカフェの横で目を引くのは、「銀座から愛媛・今治のミカン狩り体験!」の文字。
この体験展示では、銀座でスマートフォンを使って愛媛県今治市にあるロボットを遠隔操作し、ミカンに見立てたボールを掴んで穴に入れるゲームを楽しむことができます。
体験はタイムアタック形式で行われており、お子さまでも楽しめるよう工夫されたエンターテインメント性あふれる内容となっています。この体験を通じて、遠隔操作ロボットを身近に感じることができました。
今治ブースの方から、「もうちょっと右です!」など指示を受け、緊張感の中、ロボットを操作します。スマホ画面をなぞることで、ロボットが前進/後退/回転し、両手同時タップでミカンボールを掴みます。
掴んだまま回転し、白い収穫かごの中に入れればクリアです。位置の微調整が難しく、良い塩梅でボールを離すことが中々できません。
もう少し・・・
スポッ!入りました! 今治ブース、そして銀座が盛り上がった瞬間です。多くの大人に見守られながら、手に汗握る作業でした。
ミカン狩りを達成した後で3Fに上ってみると、「海岸でマングローブの種を植えよう」「ゴミ山でゴミの分別をしよう」「山岳地帯で電波望遠鏡のメンテナンスをしよう」といった、遠隔操作ロボットが活躍する具体的なシーンを体験できる展示が行われていました。これらの体験もミカン狩りと同様に、スマートフォンを使ってロボットを操作する仕組みです。このように、社会において必要でありながら物理的に困難な作業をロボットが担い、人とロボットが共生していくことが、サステナブルな社会の実現に不可欠であることを学びました。
ゴミに模したボールを回収。ミカン狩りの経験でスムーズにミッションクリアできました!
サステナビリティに関する取り組みは一見難しく感じられるかもしれませんが、今回の遠隔操作ロボットの体験を通じて、技術の進歩が自分自身や世界の誰かの役に立っていることを、身近に実感することができました。
今や多くの企業が積極的にサステナビリティに取り組んでおり、こうした体験型のイベントや施設もさまざまに展開されています。お近くで開催されている場合は、ぜひ足を運んでみてください。サステナビリティを自分ごととして捉える良い機会となるでしょう。
共に作業したロボット君にも愛着が湧きました。人とロボットの共生も、まずは「一緒にやってみる」ことが第一歩目であるかもと、今回の体験を通じて率直に感じました。
※「ミカン狩り」展示はすでに終了しています。また、他の展示内容も時期により変更になることがあります。