廃材から生まれるサーキュラーエコノミーなブースづくり 〜大型3Dプリンター見学レポート〜
「展示会やイベントで使われたブースの廃材はどうなるのだろう?」
皆さんはこういった疑問を持たれたことはありますか?
通常であれば、レンタル部材は返却し再利用されたり、オリジナルで新規制作されたものであれば産業廃棄物として処理されたりと、扱いは様々です。
しかし、ここ数年で「サーキュラーエコノミー」の社会的な取り組みが進み、展示会やイベントでもなるべく資源を無駄遣いしない考え方が浸透しつつあります。
そういった中で、我々アイプラネットサステナビリティLabは“廃材を新たな資源として活用する「循環型ディスプレイ」”の存在を知り、当社も日頃から取引のある展示会・イベントの企画、制作、施工、運営を行う株式会社昭栄美術のベイスタジオを訪れました。
本コラムでは、そこで見た循環型ディスプレイを具現化する大型3Dプリンターの実態とその取り組みについてご紹介します。
目次[非表示]
- 1.3Dプリンターが生み出す「循環型ディスプレイ」とは?
- 2.3Dプリンターの仕組みを見学!
- 2.1.1.廃材の粉砕
- 2.2.2.ペレット化
- 2.3.3.3Dプリンターで造形
- 2.4.4.何度も試行錯誤を重ねるものづくり
- 3.3Dプリンターがもたらす新しい可能性
3Dプリンターが生み出す「循環型ディスプレイ」とは?
昭栄美術では、展示会・イベント業界における環境負荷を減らすために、従来の「リサイクル・リユース」だけでなく、廃材を再生し、新たな価値を持つ什器やオブジェにアップサイクルする仕組みを導入しています。
その核となるのが、今回見学した「大型3Dプリンター」。廃プラスチックや使用済み資材を粉砕・加工し、ペレット状にして再利用することで、廃棄物の削減と資源の有効活用を実現しています。
写真はその大型3Dプリンター。幅3m×奥行3m×高さ3mもあり、最大でブース1小間ほどの造形物も創ることが可能とのこと。
3Dプリンターの脇には、プラスチックや木材を細かく砕いたペレットや、実際に3Dプリンターで制作したディスプレイのサンプルなどがありました。
3Dプリンターの仕組みを見学!
「どのように廃材が新しい造形物に生まれ変わるのか!?」
その流れの一部を実際に制作される工程を見学しました。
1.廃材の粉砕
展示会やイベントで使われた資材のうち、再利用が難しいものは粉砕機で細かく砕かれ、フレーク状にされます。これにより、従来は廃棄されていた資材が次の工程へと進める状態になります。
2.ペレット化
粉砕された材料は、押出成形機で熱を加えてフィラメント状に加工され、その後冷却されてペレット(小さな粒状)になります。このペレットが、3Dプリンターの原料になります。
3.3Dプリンターで造形
ペレットを大型3Dプリンターにセットし、ブースやオブジェなどの造形物をプリントします。昭栄美術の3Dプリンターは、最大で幅3m×奥行3m×高さ3mの造形が可能で、ブースの壁や装飾パーツなどを一体成型できるのが特徴です。
4.何度も試行錯誤を重ねるものづくり
実際に3Dプリンターが動いている様子を見ていると、1回で完璧なものができるわけではないことがよくわかりました。
何度も失敗を繰り返し、材料の配合や出力の設定を微調整しながら、理想の形を作り上げていくプロセスがあるのです。
担当者の方によれば、「最初は思ったように積層されず、何度も試行錯誤を重ねた」とのこと。これは単なる技術の問題ではなく、「どうすれば廃材が活きるのか?」「どんな形状が適しているのか?」という問いを突き詰める作業そのものなのだと感じました。
熱せられたペレットが押し出され、ソフトクリームのように積み重なることで造形されます。
3Dプリンターがもたらす新しい可能性
見学を通じて感じたのは、「サステナブルなものづくりの可能性が広がる」ということです。
従来の木材や金属の加工では難しかった曲線的なデザインや複雑な構造も、3Dプリンターを使うことで自由な形状に造形可能になります。
さらに、廃材を原料とすることで、新しい素材を使わずにデザインの自由度を高められるのは大きなメリットです。
「リサイクル資材を活用しながらも、デザイン性を損なわない」そんな展示空間の実現が可能になると感じました。
昭栄美術の取り組みは、単なる技術革新にとどまらず、「廃棄物を資源へと変える」という新たな視点を私たちに提供してくれました。
ただし、その取り組みにはサステナブルな成果物の結果だけではなく、裏側にある企業としての姿勢や想いなどのストーリーも大切になってくると思われます。
そういった想いをカタチにするコミュニケーション設計から、サステナビリティLabは参画させていただける声をお待ちしています!
これからの展示会やイベントブースが、どのように進化していくのか、ますます楽しみです!